うつ病とADHDの患者はどうなるのか
厚生労働省部会がリタリンの処方を厳格化
及川 健二(2007-10-22 19:05)
http://www.ohmynews.co.jp/news/20071022/16396
難治性・遷延性うつ病の治療に使用されている向精神薬「リタリン」の効能からうつ病を削除することを、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会の部会が10月17日に決定した。
この決定は製造販売元のノバルティス・ファーマ社の要請を受けたもので、委員からは特に異論は出なかった。リタリンは今後、1万人あたり3~18人の確率で発症し、日中に過度の睡魔に襲われる睡眠障害・ナルコレプシーの患者にのみ処方が認められることになる。
厚労省は10月中にもリタリンの効能からうつ病を削除する方針で、ナルコレプシー以外での処方は保険が適応されず、100%、患者の自己負担となる。
さらに、ノバルティス・ファーマ社は2008年初頭を目途にナルコレプシーを正確に診断できる医療設備・施設の整った医院・医師を精査した上でリスト化して、リタリンを処方できる医療機関・薬局を登録制にして流通を厳しく管理する方針。日本全国で100程度の医療機関に絞り込まれることが予想され、これによって99%以上の精神科医が、リタリンを処方できなくなる。
厚労省の決定はどのような事態をもたらすのか。都内の医療関係者は次のように指摘する。
「リタリンを服用しているうつ病の患者は万単位で存在するでしょう。さらに、『片づけられない女』で広く知られるようになった成人ADHD(注意欠陥・多動性障害)の患者も、治療薬としてリタリンを服用している人が少なくありません。欧米ではリタリンは主にADHDの治療薬として認可・使用されていますが、日本では認められていません。リタリンの処方をナルコレプシーの患者に限定すれば、現在、同薬の恩恵を被っている多くの患者が一気に切り捨てられることになります。厚労省と製薬会社の対応は強引で、患者の人権を無視したものだといわれても仕方ないでしょう」
医療の地域間格差が顕著になる
リタリンが唯一、対象とすることになるナルコレプシーの患者にも多大な影響を与えると指摘するのは別の医療関係者だ。
「ナルコレプシーを正確に診断するためには、患者は最低でも1泊2日入院しなければなりません。患者は特別病棟に入れられて、頭に無数のセンサーをつけられ、睡眠時と日中の脳波を測定されます。患者1人に対し、専門の看護士が1人つき、完全な監視体制の下で、検査が行われます。大がかりなため、いつでも検査が受けられるわけではありません。どこの医療機関も月に1度、少人数に限って、検査を行っています。1回の検査代は患者1人につき3万~5万円程度かかります。ナルコレプシーかどうか厳密に検査するためには最新の医療機器や専用の病棟が必要な上、専門のスタッフも必要なため、診断を下せる医院はごく限られてきます。ナルコレプシーを正確に診断できる医院は全国で100にも満たないのが実状です。都市部では複数存在しますが、地方によっては県に一つしか医院が存在しないところもある。現在では正確に測定できる設備を持たない医師や医院でも、病状を聞いて患者がナルコレプシーだと診断できます。しかし、厚労省は今後、必要な機器を持たない医院の診断を認めません。ナルコレプシーだと判断されるには、かなりの時間と費用が必要になります。リタリンを処方できる医院はごくわずかに限られるため、ナルコレプシーだと診断されても地方の患者でしたら、遠方の医院に定期的に通わなければならなくなります。医療の地域間格差が顕著になるでしょう」
厚労省の拙速な対応に反発して、うつ病やADHDの患者が中心となって、「ADHD・難治性うつ病へのリタリン処方を求めていく患者と支援者の会」が近々、結成される。同会は国会議員や厚労省、ノバルティスファーマ社にロビー活動を行っていき、巻き返しを図るつもりだ。暴走気味の厚生官僚と製薬会社に、はたして患者の声は届くだろうか。
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