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リタリン回収、ノバルティスは関与を否定

難治性・遷延性うつ病や睡眠障害のナルコレプシー、ADHD(注意欠陥・多動性障害)の治療薬として用いられてきた向精神薬「リタリン」が、院外処方を行う街の薬局から続々と回収されている実態は今月12日の記事「リタリンが薬局から消え始めた」で、報じたとおりだ。

http://www.ohmynews.co.jp/news/20071114/17318

 再三、質問状を送っても何ら音沙汰がなかったリタリンの製造販売元・ノバルティスファーマから、この12日に記事が掲載されるや、事情説明のメールが送られてきた。

 リタリンが処方箋を扱える調剤薬局から次々と回収されている現状について同社は次のように説明する。

 「弊社がリタリンを回収しているという事実はなく、現在行っている対応は、医療機関・薬局の任意のご判断に基づき、返品をご希望された場合に受領しているものです。通常、回収とは製品の健康被害への危険性などを考慮してなされるもので、実際に回収する際には都道府県を通じて厚生労働省に届出なければならず、また、その回収の行為は公表されます。したがいまして、リタリンに関して厚生労働省への届出も含めて弊社から回収をしているということは一切ございません。現在は、適応症として認められているナルコレプシーの患者さんに対しまして安定供給に努めております」


リタリンの錠剤

 一方、薬局はリタリンを回収する理由は製薬会社の通達があるからだ、と述べる。

 都内の調剤薬局チェーン・龍生堂の担当者はリタリンを回収して、医師の処方箋があっても患者に同薬を調剤しない理由をこう説明する。

 「(ノバルティスファーマが10月26日に追加した)リタリンの添付文書には 『ナルコレプシーの診断・治療に精通し薬物依存を含む本剤のリスク等についても十分管理できる医師・医療機関のもとでのみ行うとともに、それら薬局においては調剤前に当該医師・医療機関を確認した上で調剤を行うこと』 との警告があるからです」

 現段階では、ナルコレプシーに精通する医師・医療機関がどこなのか、メーカーも厚生労働省も提示していない。したがって、薬局は独自には判断できず、リタリンは処方できないという。

 メーカーの文書がリタリンの回収を招いていることは明らかだろう。

 このメーカーからの通知に対し、日本の精神医療を長年、密着取材する一方で、欧米先進国の精神医療行政についても精通し、業界紙を中心に精力的な執筆活動を続ける医療ジャーナリストの1人は、匿名を条件に、以下のように語った(匿名の理由は、「リタリンを擁護しているように誤解されると、仕事上マイナスになるから」という)。

 「リタリンが睡眠障害のナルコレプシーに対してのみ処方できるようになるのは遅くとも来年1月1日までと決まっています。それまではうつ病やADHD(注意欠陥・多動性障害)の治療に医師の自由裁量でリタリンは処方できます、同薬の適応から外されたため保険は効きませんけれども。これは厚生労働省もメーカーも認めていることです。薬局がリタリンの調剤を独断で拒否するのは越権行為ですよ」

 区内のほとんど調剤薬局からリタリンが回収されたという新宿区では、オンブズマン議員として行政を厳しく監視・チェックしている無所属の区議がこう語る(区議の匿名理由も上記ジャーナリストと同じ)。

 「新宿区保健所が、メーカーの添付文書を根拠に、リタリンを回収するように区内薬局に指導しているようです。メーカーからの通達に保健所が過剰反応しているのが実態です」

 リタリンの流通を適正化するうえで、薬局や医師の間で混乱が生じないように、遅くとも2008年1月1日までにメーカーが第三者機関をつくって、慎重な検討を重ねた上でリタリンを処方できる薬局・医師・医療機関をリスト化し限定することが10月17日の厚労省の部会で決定している。

 しかし、第三者機関の設置前に、メーカーはリタリンを処方できる医師・医療機関を「ナルコレプシーの診断・治療に精通し薬物依存を含む本剤のリスク等についても十分管理できる」ところに限った。どの医院がナルコレプシーに精通しているのか何の情報も与えられないまま、薬局は処方箋の有効性について独自に判断しなければならない。しかし、実態はメーカーの通達や保健所の指導があるために、薬局がリタリンの処方を自主規制しているのが現状だ。

 「適応症として認められているナルコレプシーの患者さんに対しまして安定供給に努めている」

 メーカーはそう弁解するが、「現状を分かっていない」とナルコレプシーを患う都内の患者は指摘する。

 「ナルコレプシーを正確に診断できる設備を持つ医院は都内でも数カ所に限られています。そのため、月に2度、通院するのには地理上、不便であったり、患者数を多く抱えているため待ち時間が長かったり、予約がなかなかとれなかったりと何かと不便です。だから、専門家医に診断書を書いてもらい、地元や勤務先近くの医院でリタリンを処方してもらっている患者は少なくありません。私もその1人です。しかし、一般の精神科医が書いた処方箋ではリタリンの調剤を受け付けない薬局が増え、とても困惑しています。適切な施設でナルコレプシーだと診断された患者に対しては、どの医院の処方箋であろうともリタリンが薬局で調剤されるようにすべきではないでしょうか? ナルコレプシーを正確に診断できる設備を持つ医院・医師にしかリタリンを処方できる権限が与えられないとすれば、患者には相当な負担・不利益になります。通院するのにこれまで以上の労力がかかるのは目に見えています」

 都内の薬局を統括する東京都薬剤師会の薬事保険課長である渋谷弘治氏は

 「効能・効果上リタリンが必要な方にまでリタリンが供給されないことは問題だと認識しています」

 と指摘する。

 リタリンをめぐっては、メーカーや保健所、厚労省は一貫性のない対応に終始している。第一に優先されるべき患者についてまったく考慮していないことは明らかだ。一体このまま患者を無視してつくられるリタリン規制策は、どれだけいびつなものになるであろうか。想像するだけで恐ろしい。

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