厚労省がリタリンの効能からうつ病を正式に削除 患者からは反発も
難治性うつ病や遷延性うつ病の治療薬として用いられてきた向精神薬「リタリン」について、厚生労働省は26日、適応症からうつ病を削除することを正式に承認した。これでリタリンは10代から20代前半の若者を中心に1000~3000人に1人の頻度で発症し、日中に過度の睡魔に襲われる睡眠障害・ナルコレプシーのみに使われることになる。
http://www.news.janjan.jp/living/0710/0710284681/1.php
stock.xchngより
厚労省は都道府県にこの決定を通知し、リタリンの厳正な管理を再度、求めた。今後もしばらくの期間はリタリンをうつ病の治療に使用することは可能だが、ナルコレプシー以外の用途でリタリンを処方する場合は保険外診療になるため、薬代は100%患者の自己負担となる。ただ、取材を進めたところ、厚労省がうつ病を効能から外したことで、医療機関は自主規制をして、ほとんどの医師がうつ病の治療ではリタリンの処方を中止する方針だ。
乱用問題や依存症が今年9月にテレビや新聞で大きく報じられてからわずか1カ月で、リタリンはうつ病の治療薬のリストから削除されることとなった。医療ジャーナリストの1人は急展開について、次のように語る。
「リタリンの製造販売元のノバルティスファーマ社が同薬の適応からうつ病を削除する方針であると発表したのが9月21日のことです。会社側から薬品の適応の取り下げを厚労省に申請するのは前代未聞のことでした。10月17日に開かれた厚労省の薬事・食品衛生審議会の部会で同社の申請が承認され、26日にリタリンの効能からうつ病が削除されました。一連の動きはお役所仕事にしてはあまりにもコトが早く進みすぎです。初めからシナリオができていたのではと思ってしまいます。私が問題だと思うのは、拙速すぎる対応のために、患者の声が完全に置き去られてしまったことです。薬を消費する患者の利益は何よりも尊重されるべきなのに、主人公の患者を欠いて議論が進められた。製薬会社と厚労省の独断で物事を決めるのではなく、少なくともリタリンの恩恵を被っている末端のうつ病患者から広くヒアリングした内容も判断材料にするのが当たり前です。今回の早期決定は結論先にありきで製薬会社と官僚が暴走した結果としか思えない」
◆リタリン追及の都議も急展開に驚き
リタリンの不適切な処方で都が立ち入り調査した東京クリニックやリタリンの乱用を前々から急先鋒となって議会で取り上げていた民主党の柿沢未途・都議会議員も急な展開に驚きを隠さない。ロビー活動の一環として同都議と面会した市民団体「ADHD・難治性うつ病へのリタリン処方を求めていく患者と支援者の会」メンバーによれば、柿沢氏は「今回のように急にうつへの適用を打ち切ることは自分も期待していなかったし、予想外だ」と述べ、製薬会社の対応を「マスコミによるリタリン叩きに過剰反応したのではないか」と推測した。
また、「すでにリタリンを処方されて生活を成り立たせている患者がいるのに、ノバルティスファーマ社がいきなり全部を打ち切るのは、製薬メーカーの姿勢としていかがなものかと思う」とメーカーの対応を批判した。柿沢氏はリタリンを社会問題化させた責任の一端が自分にもあると認め、「リタリンを適正に使用している患者と製薬会社が対話できるような機会を製薬会社に求めていきたい。都議会議員としては、リタリンの適切な使用で助かっている患者さんを見捨てるつもりはない」と最後に述べた。
しかし、都内に勤めるある医療関係者は、患者は最後には見捨てられ、路頭に迷うことになると、悲観視している。
「ノバルティスファーマ社は2008年初頭を目途にナルコレプシーを正確に診断できる医療設備・施設の整った医院・医師を精査した上でリスト化する準備に入っています。リタリンを処方できる医療機関・薬局を登録制にして流通を厳しく管理する方針です。登録される医療機関は全国で100にも満たないでしょう。これによって99%以上の精神科医がリタリンを処方できなくなる。その結果、うつ病患者がリタリンを入手することは完全に不可能になります。ある人が製薬会社に問い合わせたら、『リタリンは古い薬で、今はうつ病に効く新薬が出ている。うつ病は新薬やカウンセリング、新治療で乗り越えられる』と断言したそうです。厚労省に問い合わせたら、『主治医と話し合って他の薬との組み合わせを試して、リタリンに代わる治療法を見つけてください』と他人事のように言われたといいます。新薬も含め色々な抗うつ薬・治療法を試しても効果がなかったから、リタリンを服用するようになった人がごまんといるのです。中にはリタリンがあって何とか現実と折り合いをつけられている人もいる。服用を中止すれば、会社や大学に通えなくなるという人は私の周りにも複数います。メーカーも官僚もそういった現実を直視していない。さらに、問題なのはリタリンを服用している患者が急に服用をやめるとひどい離脱症状にさいなまれることです。薬をやめる場合、患者の症状を慎重に観察しながら、徐々に減量していくのが王道です。患者からいきなりリタリンを奪い取るのはあまりにも非人道的で、危険過ぎます。」
また「ADHD・難治性うつ病へのリタリン処方を求めていく患者と支援者の会」のメンバーの1人はこう語った。
「必要な医療を受けられるのは国民としての当然の権利です。それがいま奪われようとしています。リタリンは普通の薬と同じように、医師が必要だと判断して処方し、患者は適量を守ってそれを服用しているのです。患者を診ることなく、何の根拠があってリタリンは必要ないと国がうつ病患者全員に診断を下せるのでしょうか。製薬会社や官僚の対応から感じられるのは、精神医療ユーザーに対する彼らの根深い偏見と傲慢さです。所詮、精神病者と見下している。だから、患者の声に全く耳を傾けず、実態を調べようともせず、当事者不在で物事を進める。患者の声を聞け!といいたいですね」
厚労省や製薬会社に患者の訴えは、はたして届くのだろうか?
(及川健二)
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