ついに家宅捜索!話題の医院・東京クリニックの正体(下)
東京クリニックが行ってきた違法行為とはどんなものか?関係者は語る。
http://www.ohmynews.co.jp/news/20071119/17528
「一度、診察してもらった患者さんでしたら、前回の処方薬と同じ内容であれば、希望すれば医師の診察なしで処方箋を出しました。クリニックに行く30分前に患者さんから電話で、『今日はお薬の予約を御願いします』と頼まれれば、処方箋をすぐにつくり、医院に行けば待つことなく、処方箋だけさしあげました。医師と患者さんが顔を合わすことなく、処方箋が出されたわけです。精神科というと診察まで長く待たされることが多いといいますが、東京クリニックのシステムはとても便利で、無駄な時間がかからないと好評でした。そして、今回、家宅捜索を受けた容疑にあるように、希望者には宅配便で処方箋を送ることもありました。医院に来る時間もないくらいに忙しいサラリーマンからは診察なしの宅配サービスは人気でしたよ」
9月に都と区保健所が立ち入り検査してからは、これらの違法サービスは廃止された。
さらに、同医院では違法すれすれの診察が行われていた。それは覚醒作用もある向精神薬「リタリン」の処方の乱発だ。関係者はいう。
「他の精神科医ですと、たいていリタリンをうつ病患者には処方しないというのが近年の趨勢でした。同薬を入手するのは極めて困難なのが現実でした。しかし、東京クリニックは患者さんが初診でも希望されればリタリンをすぐに処方しました。そのことは口コミやネットで評判になっていました。リタリンが欲しくて東京クリニックに来るという患者さんは少なくなかったと思いますよ」
たしかに、初診でリタリンが処方されたと証言する患者は多い。東京クリニックがリタリンを手軽に処方したことが乱用問題の一因だとメディアでは報道され、厚生労働省と販売元の製薬会社によるリタリンの規制強化を後押ししたと指摘する人は多い。
都内のある薬剤師は語る。
「東京クリニックはリタリン乱用の象徴となりました。リタリンの規制を厳しくしようとする意見は前々から専門家の間でありましたが、過剰なまでの規制案を製薬会社が急遽出したのは、同医院の存在がクローズアップされたことが大きな要因です」
伊澤前院長の犯罪も世間を騒がせた。
伊澤氏は診断結果を尋ねられたことに激昂し、女性患者の髪をつかんで壁に後頭部を叩きつけるなどして全治3週間の怪我を負わせた上、助けに入った付き添いの夫に対しても全治10日間の怪我を負わせるなどした傷害の容疑で今年1月23日、逮捕された。東京地裁は3月6日の判決で「短絡的な動機に汲むべきものはない」とし、「常軌を逸した」被告の行為を「軽く見ることはできない」として、懲役2年執行猶予3年を言い渡した。
厚生労働省は9月27日に諮問機関・医道審議会の答申を受けて、傷害事件を理由に伊澤氏に医業停止2年の処分を下した。伊澤氏は10月15日から医師の資格を剥奪されたた。
院長交代後の新体制でも苦情が殺到
都と保健所が立ち入り検査をした後に、東京クリニックは9月16日付で新宿区保健所に廃院届けを提出した。そして、鳥取大学出身の於勢尚久(おせなおひさ)医師が院長に就き、翌日から別法人である新・東京クリニックとして再スタートした。関係者はいう。
「廃院届けをこちらから出していなければ、行政によって医院は閉鎖に追い込まれていたでしょう。存続のために先手を打ったわけです」
新体制になってからは診察なしの処方という違法行為はやめられたが、患者へのリタリン処方は相変わらず続いている。地元保健所によると、院長が交代した9月17日から11月15日までの約2カ月で、患者や家族から17件、調剤薬局から38件の計55件、苦情や相談が寄せられた。多くがリタリンの処方に関するものだった。
厚労省が10月26日に、リタリンの適応症からうつ病を削除し、睡眠障害のナルコレプシー(睡眠障害)にのみ処方できるように正式決定してからは、調剤薬局から苦情が相次いだ。「以前はうつ病でリタリンを処方されていた患者の診断名が、ナルコレプシーに代わっている」という通報だった。
その結果、周辺の薬局は東京クリニックの処方箋ではリタリンが処方されなくなった。東京クリニックのお得意さまだった龍生堂薬局・新宿本店もその一つだ。本社総務部の安藤勤氏はその理由を説明する。
「弊社は11月6日に厚生労働省の関東信越厚生局麻薬取締部の伊藤祥夫氏より、東京クリニックのリタリン処方箋について、脳波検査によるナルコレプシーの診断データ等の確認を取ってから調剤をするようにという口頭指示を受けています。また、11月15日に新宿区保健所衛生課環境衛生係入澤直樹氏より、東京クリニックによる処方箋についてナルコレプシーの正式な診断が確認できなければ、薬剤師の判断に従って、調剤を断っても良いという指示を受けております」
龍生堂は東京クリニックがナルコレプシーを正確に診断できないと判断したわけだ。
東京クリニックは今後も医院として活動を続ける方針だ。しかし、警視庁の捜査が入ったことで、診察の実態は改善されるだろうと関係者は推測する。
「リタリンが患者さんに処方されなくなる可能性はありますね。患者さんにナルコレプシーと安易に診断することもなくなるでしょう。しばらくは診療をめぐって混乱がつづくかもしれません」
第三者委員会が設置されるまでは医師は自由にリタリンを処方可能
東京クリニックに捜査のメスが入ったことに対してほとんどの精神科医は「当然」「遅すぎるくらいだ」と心から感じているだろう。マスコミ報道に接した人のほとんどは「悪徳医院が摘発された」くらいにしか思っていないだろう。
しかし、リタリンの過剰規制に反対する運動を続けているうつ病患者の1人は弁解の余地もあるという。
「リタリンについて公的機関で議論された唯一の場である厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会(今年10月17日に開催)で決定したことは、リタリンの製造販売元・ノバルティスファーマが第三者委員会を設け、遅くとも来年1月1日までに、同委員会が慎重に協議した上で、リタリンを処方できる医師・医療機関・薬局を認定してリスト化することです」
「私が厚労省やメーカーに問い合わせましたら、両者とも、『第三者委員会が設置されるまでは、ナルコレプシー以外のうつ病治療が目的であっても、保険は効かないものの、医師の自由裁量によってリタリンを処方できる』と回答しました。ポイントは2つあります。第一に現状の法制度では、医師の処方箋があれば適用外の病名でも、指定された薬は保険外で使用できます。現段階でナルコレプシーにしかリタリンが処方できないというのは大きな誤りです。東京クリニックはうつ病患者に対してナルコレプシーとの診断名を下さなくても、保険は効かないと患者に説明した上で、堂々とうつ病治療の目的でリタリンを処方すればよかったんです」
「第二に、薬剤師は診断について知る立場にはありません。当然、ナルコレプシーの正式な診断の確認はできません。ある医院はナルコレプシーを診断できないと薬局が勝手に判断してはいけないのですよ。ナルコレプシーを正確に診断できる医師・医院を決定するのは、第三者委員会です。同機関が設置されていない段階では、東京クリニックには診断の能力なしと判断する権限は薬局にはありません」
そして、関係機関に「ルールを遵守すべき」と主張する。
「国が決めたことなのですから、関係機関はルールを守りましょうよ。第三者委員会の設置前はナルコレプシー以外でも医師のリタリン処方は問題なし。薬局による調剤拒否はルール違反。保健所や関東信越厚生局麻薬取締部が薬局に出した指導は明らかなフライングで、指導には行政的・法的な根拠がまったくない。皆がリタリンをさっさと追放しようと躍起になっていますが、先走るなといいたい。リタリンのXデーを第三者委員会の設置日に決めたんだから、リタリン規制をそれ以前にしてはいけない」
現段階では医師であれば誰もが患者にリタリンを処方できる。禁止する根拠は何もない。厚労省も製薬会社も医師による自由裁量での処方は問題なしという公式見解なのだから、これまでリタリンを処方されてきたのに突然、処方を中止された患者はメーカーや厚労省の見解を確認し、医師にそれを伝え、説得するといいだろう。
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