広がる「お手軽やせ薬」ご注意 女性誌やネットに誤情報
医師の処方が必要な向精神薬や個人輸入などの形で入ってきた未承認薬が、「お手軽なやせ薬」としてインターネットや雑誌で紹介され、広く服用されている。美容クリニックがその販売窓口になっているケースもある。サプリメントなどの栄養補助食品と薬との区別があいまいなまま利用されている面にも問題がある。根強いダイエットブームの中で、「安易な服用には副作用の危険も伴う」と関係者は警鐘を鳴らしている。
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200802270043.html
●サプリ感覚
「Q 今まで試したサプリ系でいちばん効果のあったのは?」
「A ゼニカル」
女性誌のダイエット特集で昨年12月、こんな記事が掲載された。
ゼニカルは、欧米で医師の処方にもとづき肥満患者が服用している薬剤で、サプリメントではない。腹痛や膨満感などの副作用があり、日本では未承認で保険の対象外だ。しかし「ダイエット効果がある」として個人輸入代行や通信販売をうたうサイトが多数ある。
この雑誌は東京のしにせ出版社が約7万部を発行した。編集担当者は「ダイエット成功者のインタビューとして載せただけで、薬をサプリ系として推奨したつもりはない」と話す。
ゼニカルと並んで有名な「やせ薬」は向精神薬のマジンドール(商品名サノレックス)だ。脳に疑似的な満腹感を与えるが、睡眠障害や嘔吐(おう・と)などの副作用がある。依存性も懸念されており、医師の処方がないと入手できない。
だが、東海地方の美容クリニックのホームページにはこんな記述があった。「正規の薬剤であれば、クリニックで購入してもネット通販で購入しても違いはないはず」。このクリニックは「忙しくて取材に対応できない」と話し、直後にホームページの記述を削除した。
●薬目当て
気軽に薬に頼ろうとする傾向もある。
大阪・キタの美容クリニック。1月末、若い女性が訪れ、医師の顔を見るなり言った。
「やせる薬下さい」
身長160センチ、体重45キロ。そもそもダイエットの必要がなさそうだ。医師がそう伝えると、不満顔で帰ってしまった。週に1度はこんな「患者」が訪れる。
医師にも悩みがある。深刻な肥満患者にだけ薬を処方していたら、経営者から「処方量が減っている」と注意される。「それが美容クリニックの現実です」
医薬品卸会社の内部資料がある。東京都内にある医療機関のマジンドール仕入れ量(07年度上半期)の集計表だ。
複数の美容クリニックが上位に並ぶ。「うちでは一切扱っていない」。100万円分以上を購入したことになっている医院は、そう答えた。
●様子見
1月末、全国に診療所やエステ店を展開していた「メディカルサロン」グループの代表の医師(44)が医師法違反罪で起訴された。医師でないエステ店の店長らに、マジンドールを処方させたとされる。「大量に処方して利益を上げたかった」と供述しているという。
厚生労働省の担当者は「やせ薬」について「安易な服用は深刻な健康被害を招きかねない」と話す。ただ、不適正処方や未承認薬の服用については「乱用が問題になっているわけでない」などとして、ホームページで注意を呼びかけるなどにとどめている。
<向精神薬> 鎮痛剤や睡眠導入剤、精神安定剤など、中枢神経系に作用して精神機能に影響を及ぼす薬剤で、乱用すると健康上の危険につながるおそれがあるもの。国内では39成分が承認されている。依存性や副作用のおそれがあり、医師の処方が必要。麻薬や覚せい剤、あへん、大麻は含まれない。最近ではうつ病患者に使われていたリタリンの乱用が社会問題になったため、投薬対象を睡眠障害に限り、処方できる医師を登録制にするなど規制が強められた。
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