ヘルシーリポート:ストレス解消 免疫細胞の働き活性化
4月は何かとストレスが多い季節。新しい会社や学校への期待と不安、転勤や異動に伴う戸惑いなど、精神が不安定になりやすい時期だ。どうすればストレスに負けない免疫力をつけて、元気に過ごすことができるのかを考えてみたい。【小島正美】
http://mainichi.jp/life/health/news/20080329ddm010100141000c.html
◇過労は禁物、睡眠と運動を/乳酸菌飲料も効果的
笑うと元気になる。なぜだろうか。
こんな試験がある。一般の人に笑いを誘うユーモラスなビデオを見せて、体内の免疫細胞のひとつであるNK(ナチュラル・キラー)細胞の活性具合を調べたところ、笑って元気になった場合には、NK細胞の活性が上がることが分かった。
逆に、ストレスが強く、感情が不安定な状態だと、NK細胞の活性は下がる。
■がん細胞を破壊
人の体内には、外部から侵入する病原菌や花粉などの異物を撃退したり、破壊したりする免疫細胞がいる。NK細胞はそうした免疫細胞のひとつだ。ほかにマクロファージや好中球などもいる。
NK細胞の働きは、がんなどにも関係する。家系的にNK細胞の働きの弱い人たちは、がんの一種の悪性リンパ腫の発症率が高いという研究報告がある。また、埼玉県立がんセンター研究所の調査では、NK細胞の活性の低い人ほど、がんの発生率が高いという結果も出ている。
こうした研究で分かるように、NK細胞はがん細胞を傷つけて殺す働きもする。
■バロメーター
風邪をひきにくい人は、一般にNK細胞の活性が高いといわれる。NK細胞は自分の体の免疫力を測るバロメーターなのだ。
では、どうすればNK細胞の活性を高めることができるのか。
NK細胞の活性は日々変動する。ちょっとストレスがたまるだけでNK細胞の働きは弱くなる。高齢者と若い人を比べると、高齢者の方がNK細胞の活性は低い。
奥村康・順天堂大学医学部教授(免疫学)によると、長距離トラックの運転手など昼夜逆転の生活を続けると、NK細胞の活性が低くなるという。
このほか、喫煙習慣のある人、運動不足の人、睡眠不足の人、いつも悩みをかかえている人も、NK細胞の活性は低い。
つまり、過労、睡眠障害や強い精神的ストレスなどライフスタイルに問題を抱えていると、NK細胞の働きは弱くなる。NK細胞の活性を高める基本は「よく眠る」「働き過ぎない」「適度に運動する」などだが、乳酸菌飲料を飲むのも一案だ。
奥村教授らは、生活リズムの変化でストレスが生じやすいタクシー運転手を対象に乳酸菌飲料(乳酸菌シロタ株)を1週間飲んでもらい、NK細胞の活性が上がるかどうか調べた。
試験のやり方は、血液からNK細胞を取って、培養皿でがん細胞に触れさせ、NK細胞ががん細胞をどれだけ撃退するかを見る方法だ。その結果、乳酸菌飲料を飲んだあとは、NK細胞の攻撃力が高まることが分かった。
このほか、喫煙者に乳酸菌飲料を飲んでもらったところ、NK細胞の活性が上がったという報告もある。
また、膀胱(ぼうこう)がんを外科的に切除した表在性膀胱がん患者の再発率が乳酸菌飲料の摂取で下がったという疫学調査もある。
■腸内細菌バランス
一方、腸内細菌のバランスをよくすることも免疫力の向上に役立つ。腸内には数百種類の細菌が100兆個もすんでいる。乳酸菌やビフィズス菌など有用な細菌、黄色ブドウ球菌やウエルシュ菌など有害な細菌、その中間的な大腸菌など、いろいろな細菌がバランスを保ちながら、私たちの健康を支えている。
しかし、過労、酒の飲み過ぎ、食べ過ぎ、偏った食事、ストレスなどライフスタイルが悪くなると腸内細菌のバランスも崩れて、免疫力が落ちる。年をとることも細菌バランスを崩す要因だ。
最近では、その名を知られるようになったプロバイオティクス(腸内細菌のバランスを改善することで人に有益な作用をもたらす生きた微生物)といわれる乳酸菌は、腸内細菌のバランスの改善を通じて免疫力を上げる働きをする。
実は免疫細胞の半分以上が小腸に集まり、異物などを撃退する抗体の多くは小腸で作られる。奥村教授は「プロバイオティクスの利用は欧米でも盛んになっている」と腸の免疫を考えた生活スタイルを心がけたいと話している。<イラスト・勝又雄三>
毎日新聞 2008年3月29日 東京朝刊
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