健康常識のウソ・ホント:パニック障害の発作は病気の始まり、パニック発作が治まってからの治療が大切
パニック障害は、うつに移行しやすいのが問題。薬物治療に頼るだけでなく、運動や睡眠など生活改善に努めることが大切ということ、知っていますか?
http://mainichi.jp/life/health/news/20080430org00m100064000c.html
◇検証1 パニック障害の原因は不明だが、脳機能障害が疑われる ある日突然、不意に激しい動悸が生じ、冷や汗が出て、呼吸も苦しくなる。このままでは死んでしまうのではないかと強い不安に襲われ、救急車を呼ぶ。ところが、病院に着く頃には症状はおさまり、検査を受けても異常所見はない……。
こんな発作から始まる病気が、パニック障害です。日本では100人中3.5人は経験するとされるポピュラーな病気で、不安障害に分類されます。パニック障害に詳しい赤坂クリニック理事長の貝谷久宣さんによると、この病気の特徴は、パニック発作は病気の始まりに過ぎないことだそうです。
「パニック発作を繰り返しているうちに、また発作が来るのではと恐れる状態になります。これを予期不安といい、パニック障害の特徴的な症状です。そうなると、発作を起こした場所でまた発作が起こるのではないかという不安が発作を誘発し、その場所に行くと常に発作が起きるようになってしまいます。これがさらに進むと広場恐怖症です。乗り物や人ごみで発作が起こるのではないかと不安になり、外出を避けるようになってしまうこともあるのです」
パニック障害は精神的に追いつめられた状況で発症することが多く、ストレスが誘因の一つと考えられています。原因はまだ不明ですが、抗うつ薬のSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が効くことから、セロトニンやノルアドレナリンといった脳内の神経伝達物質の機能異常が関係しているのではと推測されています。
◇検証2 中等度から重症例ではパニック障害特有のうつに移行しやすい パニック障害のもう一つの問題点は、比較的重症の人ではパニック発作の前後から、うつ病が発症することです。しかも、通常のうつ病(定型うつ病)とはかなり症状の出方が異なります。
「一般的には、うつは朝起きられないことが多いのですが、パニック障害にともなう非定型うつ病の特徴は朝元気でも夕方になると落ち込むことです。よい出来事があれば気分がよくなり、悪い出来事に対しては極端に落ち込むといった気分の反応性も見られます。また、不眠や食欲不振を訴える定型うつ病とは逆に、過食や過眠、手足に鉛がついたような激しい疲労感が現れます」
貝谷さんがよく経験するのは、こんな例。デートだといって有頂天になって出かけていく。でも、ちょっとした言葉に傷ついて落ち込み(感情の過敏性)、何日間も寝込んでしまう……。体の内側からこみ上げてくる理由のない不安感や焦燥感に耐えられなくなると、リストカットなどの自傷行為に走る人も(不安・抑うつ発作)。このような場合、境界型人格障害として取り扱われてしまうケースも少なくないのだそうです。
「うつになったら、薬だけで治そうとしても無理です。パニック発作を早期に治めれば、うつに移行しないという報告もありますから、生活改善でなるべく発作を起こさないようにすることも大事です」
◇結論 薬物治療だけでなく、生活改善も必要。脳トレも役立つ? 貝谷さんによると、パニック発作の引き金になる「4悪」は、過労、睡眠不足、風邪、二日酔い。これらを避け、規則正しい生活を送ることが生活改善の第一歩となります。また、カフェインが発作を誘発することも。コーヒーを飲むとドキドキしたり不安感を感じたりする人は控えるようにしましょう。アルコールやタバコも摂取時は抗不安作用がありますが、その作用は短く、摂取後リバウンドが来て症状が悪化するので控えたほうがよいそうです。
一方、パニック障害の治療に役立つのが運動です。パニック障害は、乳酸が蓄積すると悪化することがわかってきました。「乳酸がたまらないようにするには、ジョギングなどの有酸素運動が一番」と貝谷さんも勧めます。
さらに興味深いのは、認知症予防として人気の脳トレが、うつの回復期にも有効だということ。
「パニック発作を起こすと、脳の前頭葉の血流が低下します。うつなどの症状がとれても、脳機能は回復していないことも多いのです。脳トレは脳機能を改善するので、うつの回復にも役立つのですよ」
パニック障害というと、精神面だけの問題と思われがちですが、ふだんの生活習慣も大きく影響していることを知っておきたいものです。
(取材・文 石井典子)
2008年5月15日
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