プロ野球:巨人・ゴンザレス薬物違反 巨人「注意促したが…」 「球界の盟主」激震
プロ野球で再びドーピング(禁止薬物使用)汚染が明らかになった。しかも震源地は「球界の盟主」を自任する巨人だった。日本プロ野球組織(NPB)は26日、巨人のルイス・ゴンザレス内野手(28)を、禁止薬物のアンフェタミンなどを使用したとして、1年間の公式戦出場停止処分とすることを発表。巨人は解雇する方針を固めた。昨年8月のリック・ガトームソン投手(ソフトバンク)の違反発覚以来、NPBは改めてアンチ・ドーピング意識の徹底を目指していたが、またしても球界の認識と管理の甘さを露呈した。
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20080527ddm035050096000c.html
◇本人は処分不服申し立てへ 巨人の清武英利球団代表は同日夜、東京都内の球団事務所で緊急会見を開いた。清武代表はゴンザレス本人に解雇を通告したと明らかにし、「選手に何度も注意を呼び掛けてきたが、このような事態になり残念。ファンの信頼を裏切り、申し訳ない」と謝罪した。球団は、清武代表と島崎雅夫国際部長をけん責処分とした。
巨人は21日夜にNPBからの通告を受けて以降、計3回にわたって、ゴンザレスから事情聴取。ゴンザレスは禁止薬物を摂取したことは否定したものの、「科学的な事実の前では抗弁できない」と話したという。
巨人は23日にゴンザレスの出場選手登録を抹消したが、理由は「左脇腹痛」だった。清武代表は「検査の途中なので試合に出せないと判断したが、一方でまだ『灰色』の段階だったのでそれを重視した」と釈明した。
清武代表によると、巨人は今季これまで3回、ミーティングで選手たちにドーピングへの注意を促した。06年からは契約書に「ドーピング違反は契約解除に値する」との文言も入れてきたという。清武代表は「疑義を持たれたらプロ野球は終わり。再発防止に万全を期したい」と苦渋の表情で語った。
一方、ゴンザレスは27日未明に球団事務所で会見し、処分に対して不服申し立てする意向を示した。
ゴンザレスは「口にするものは、リウマチの薬2種類とかみたばこ。それを検査してもらえないかと代理人に伝えた」とし、「自分の潔白を証明したい。リウマチ薬はドーピング検査の時に報告している。1年間の出場停止処分や、契約解除について見直すことができないかという気持ち」と語った。【仁瓶和弥、立松敏幸、鈴木英世】
◇覚せい剤該当薬物 今回ゴンザレスから検出されたクロベンゾレックス、アンフェタミン、パラヒドロキシアンフェタミンは、いずれも興奮作用のある薬物。国内外のスポーツ団体の多くが薬物検査の基準とするWADAの禁止薬物リストによると、競技会の際に行われるドーピング検査で陽性を示した場合に違反とみなされる。
アンフェタミンは、注意欠陥多動性障害や睡眠障害の治療に用いられるほか、疲労回復やダイエット(体重減量)などの効果があるとされる。しかし中枢神経を興奮させる作用があり、日本では覚せい剤取締法の該当薬物として、医療用としても認可されていない。今回の事例もNPBが警察に報告したが、刑事処分の範囲外との回答があったという。
60年ローマ五輪で、デンマークの自転車選手がアンフェタミンの過剰使用でレース中に失神して転倒し死亡。この事件が、世界でドーピングが問題視され、反ドーピング活動が本格化するきっかけになったと言われる。パラヒドロキシアンフェタミンはアンフェタミン系の薬物。クロベンゾレックスも体内でアンフェタミンに代謝され同じ作用がある。
◇再発防止を図る--根来泰周コミッショナー代行 個人にとってもスポーツ界にとっても大きな痛手。我々は厳正に処分して再発防止を図るしかない。
◇巨人・原監督 非常に残念。すばらしいフォアザチームをもって戦っていてくれた選手。僕個人としては信じたいが、こういう処分が下った以上、真摯(しんし)に受け止め、残されたメンバーでしっかり戦っていく。
◇巨人・清武球団代表 医者やトレーナーが渡したもの以外、口にしないのは当然のこと。大きな犠牲が出た。疑わしきは罰するという意味が、どれだけ重いか、選手も分かってくれたと思う。
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■解説
◇綿密な調査が必要 NPBは昨年からドーピング検査を本格導入し、昨年は134検体、今年は84検体(5月26日現在)を採取した。今月12日の実行委員会でも各球団にドーピングに関する徹底指導を改めて求めたばかり。米大リーグでは昨年末、薬物汚染の実態を調査した「ミッチェル・リポート」が発表され、有名選手の名が挙がるなど、反ドーピング意識は世界的に高まる一方だ。
そうした中での発覚だけにNPBのショックは大きい。長谷川一雄・コミッショナー事務局長は「本人は全面否定しているが、(検出された)物質は体内で生成されるものでなく、外から摂取する以外に存在しない」と1年間の出場停止という重い処分を科した。
検出された3種類の禁止薬物は、極度の興奮状態と集中力を持続させる効果があり、かつて一部のプロ野球関係者が服用をうわさされた通称「グリーニー」という興奮剤に特徴的なものだという。ゴンザレスは服用を否定しているが、万が一にも球界内でグリーニーが使用されている可能性があるとすれば、これほど恐ろしいことはない。
巨人もNPBも、これ以上の原因究明を行う姿勢は見せていない。しかし薬物汚染の拡大を防ぐには「一罰百戒」では足りない。より綿密、かつ徹底した追跡調査こそが必要ではないか。【村田隆和】
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■ことば
◇グリーニー アンフェタミンなどを含む覚せい効果のある薬の俗称。米国等で販売され、緑色のカプセルに入っているのが名前の由来。集中力を高めたり、体の疲労を軽減させる効果があるとされるが心臓への負担が大きく、依存性も高い。世界反ドーピング機関で禁止薬物に指定され、米大リーグでも06年から禁止された。日本では法律で所持、使用が規制されている。
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◆プロ野球のドーピング検査実施方法◆
(1)日本プロ野球組織(NPB)の医事委員会がドーピング検査実施試合を指定
(2)試合開始60分前に、両チームに検査対象試合であることを通知
(3)試合の五回終了時に両チームの担当者がクジを引き、当日ベンチ入りの選手から検査対象選手を選ぶ。
(4)選ばれた選手は試合終了から30分以内に検査場所に出頭。尿を採取しA、B二つのボトルに分けて提出。
(5)Aボトルを分析。禁止薬物が検出された場合、NPB医事委員会は「アンチ・ドーピング特別委員会」に報告し、特別委員会は、その選手が所属する球団に通知する。
(6)球団は72時間以内に選手本人と話し合い、Bボトルの再分析を特別委員会に申請できる。申請がなかった場合は「陽性」が確定。
(7)検査結果に不満がある場合は、制裁が発表されてから10日の間に特別委員会に異議を申し立てできる。
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◇NPBのドーピング違反の制裁基準 NPBはアンチ・ドーピング規則に違反した選手に対し、(1)けん責(2)1試合以上10試合以下の公式戦出場停止(3)1年以下の公式戦出場停止(4)無期限出場停止--と4段階の制裁を設けており、ゴンザレスは2番目に重い処分となった。また、所属する球団の関係者の関与が認められた場合は、球団に1000万円以下の制裁金を科す。禁止薬物の種類は世界反ドーピング機関(WADA)のリストに従っている。
なおWADAの規定では、禁止薬物を故意に使用した場合、1回目は2年間、2回目以降は永久資格停止となる。日本の多くの競技団体はWADAに準じた規定を持つ日本アンチ・ドーピング機構(JADA)に加盟しているが、NPBはJADAに未加盟のため、独自に処分を決められる。
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■人物略歴
◇ルイス・ゴンザレス ベネズエラ出身の内野手、28歳。97年に米大リーグ・インディアンス入りし、03年にロッキーズに移籍した。04年にメジャーに昇格し3年間で291試合出場、248安打、23本塁打をマークした。
巨人に移った昨季は、手首の故障もあって25試合の出場にとどまったが、今季は不調の李承〓が出場選手登録を抹消された代わりに、4月15日に1軍に昇格。二塁手あるいは一塁手として先発出場を続けていた。打撃も好調で、23日に登録を抹消されるまでの32試合で35安打、2本塁打、17打点、打率3割7厘と活躍していた。
毎日新聞 2008年5月27日 東京朝刊
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