富士経済、精神神経疾患治療剤などの国内市場調査結果を発表
― 医療用医薬品市場調査(2) ―
精神神経疾患、脳疾患治療剤及び消化器官用剤の国内市場を調査
認知症患者の増大で、アルツハイマー型認知症治療剤を中心に拡大する抗認知症剤
2016年の市場は1,700億円(07年の約2倍へ)
http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=188133&lindID=4
総合マーケティングビジネスの(株)富士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町 社長 阿部 界 03-3664-5811)は、国内の医療用医薬品市場を疾患領域別に6分割し、2年間で網羅する調査を行う。今回はその第二回目として精神神経疾患治療剤、脳疾患治療剤、消化器官用剤の調査を行った。その結果を報告書「2008 医療用医薬品データブック No.2」にまとめた。
この報告書では、"精神神経疾患治療剤"を抗不安薬・睡眠導入剤、抗うつ剤、統合失調治療剤、抗躁剤・神経刺激剤、抗パーキンソン病剤、抗てんかん剤、片頭痛治療剤、"脳疾患治療剤"を抗認知症剤、脳血管障害治療剤、"消化器官用剤"を上部消化管疾患治療剤、肝疾患治療剤、膵疾患治療剤、その他消化器官用剤と、疾患毎に分類し、それぞれの市場を薬剤分類毎に分析している。
<調査結果の概要>
1.精神神経疾患治療剤
2007年 3,846億円
2008年見込 3,899億円
2016年予測 4,756億円
07年比 123.7%
うつ病とパーキンソン病は、一般的な認知度の向上と疾患に対する理解が進み、保険制度の変化もあり受診患者が増えている。また、不安障害や睡眠障害、片頭痛の受診患者も、この2疾患に比べると増加率は低いが増えている。
受診患者数の増加に伴い、07年の精神神経疾患市場は前年比6.1%増の3,846億円となった。精神神経疾患では症状の評価や治療効果を測る尺度が主観的にならざるを得ない側面があり、ガイドラインやアルゴリズムが整備され治療水準の底上げで平準化されたことが市場拡大要因の一つとなっている。抗不安薬・睡眠導入剤、抗うつ剤、統合失調症治療剤がそれぞれ市場の25%ずつを占め、抗パーキンソン病治療剤が15%、他3つの疾患分類で10%を占める構成となっている。各疾患分類ともにプラス成長となったが、特に統合失調症治療剤が06年に新たに第二世代の抗精神病剤が加わったことで最も高い伸びを示した。
08年の市場は、引き続き統合失調症治療剤が伸びるものの、これまで順調に拡大してきた抗うつ剤が縮小することと、各メーカーの注力度が低下ぎみにある抗不安薬・睡眠導入剤がほぼ横ばいとなり、市場は前年比1.4%の増加に留まると見込まれる。
【主な市場(疾患分類)の動向】
1)抗うつ剤
2007年 932億円
2008年見込 889億円
2016年予測 1,180億円
( 07年比 ) (126.6%)
うつ病は社会環境や治療環境の変化、新しい治療薬剤の登場で潜在患者の受診促進が進んだが、それでも疫学調査による潜在患者に対する受診患者比率は25%程度に過ぎず、自殺者3万人時代におけるうつ病・うつ状態の潜在患者に対する治療が進み、今後も受診患者数が増えると見られる。
受信患者数の増加を背景に、市場はSSRI(※1)とSNRI(※2)が牽引し急激に拡大を続けてきた。SSRIとSNRIは効果発現が速くかつ確実で、副作用が少ないことから精神神経科だけでなく、不安や不眠に対し一般内科からも処方されるようになったことが拡大要因となっている。07年の抗うつ剤市場は前年比7.2%増の932億円となった。しかし、08年はSSRIの薬価が大幅に引き下げられ、市場は縮小すると見込まれる。
今後もSSRIが牽引し市場は拡大すると予測される。安定して受診患者数の増加が予測される中、08年ほどではないが、薬価改定毎の引き下げが予想されるため年率3%程度の成長と予測される。
※1 SSRI:選択的セロトニン再取り込み阻害薬(Selective Serotonin Reuptake Inhibitors)は人間の精神活動に大きく影響しているセロトニンの再吸収に作用しうつ症状を改善する薬剤。現在、抗うつ剤の70%以上を占める。
※2 SNRI:セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(Serotonin & Norepinephrine Reuptake Inhibitors)は、SSRIの次世代の抗うつ剤。シナプスにおけるセロトニンとノルアドレナリンの再吸収を阻害することで、これらの物質濃度を増加させうつ症状を改善する薬剤。
2)抗パーキンソン病剤
2007年 517億円
2008年見込 535億円
2016年予測 625億円
( 07年比 ) (120.9%)
パーキンソン病は、何らかの原因による黒質神経細胞の変性を主体とする進行性神経変性疾患であり、ドパミンの産生が80%程度減少するとパーキンソン病が発症すると見られている。発症は60歳以上の高齢者層に多く見られるが、40歳前後で発症することもある。高齢化を背景に、日本独自の診断規準の作成と、医療支援体制や疾患認知度の向上により受診患者が増えている。
抗パーキンソン病剤市場は受信患者数の増加に伴い拡大しており、07年は前年比2.2%増の517億円となった。その50%以上を占めているのがドパミン受容体刺激剤である。ドパミン受容体刺激剤は07年1月に米国で、一部ブランドの副作用が発表されたことを受け、治療現場に一時的な混乱をもたらしたものの市場に対するマイナス影響は小さかったと見られる。しかし上位ブランドは入れ替わっている。
今後もドパミン受容体刺激剤を中心に拡大を続けると予測されるが、薬価改定毎の引き下げは避けられず、年率1~2%程度の伸びで推移すると予測される。新しい作用機序をもつ薬剤や遺伝子治療についても研究が行われているが、開発ステージからみると製造承認申請はまだ先と見られる。
2.脳疾患治療剤
2007年 1,300億円
2008年見込 1,394億円
2016年予測 2,135億円
( 07年比 ) (164.2%)
食生活や生活習慣の欧米化などにより脳梗塞をはじめ、脳卒中全体の患者数が増え続けているとともに、高齢化に伴いアルツハイマー型認知症の患者も増加している。
07年の脳疾患治療剤市場は前年比8.4%増の1,300億円となった。市場を牽引しているのは抗認知症剤で、特にその中のアルツハイマー型認知症治療剤が伸びている。一方、脳血管障害治療剤は03年に緊急安全性情報が出されたことで、03年~04年と一時的に縮小し、近年は抗トロンビン剤や抗血小板剤でジェネリック医薬品の台頭で縮小している。
脳血管障害治療剤では、全く新しい作用機序を持つ新規有効成分の開発が行われているが、製造承認を得られるまでには時間がかかると予想される。そのため、アルツハイマー型認知症治療剤の既存薬の拡大と、2010年頃に新薬剤の発売が予測されることから、抗認知症剤が今後も市場牽引して拡大すると予測される。
【主な市場(疾患分類)の動向】
1) 抗認知症剤
2007年 821億円
2008年見込 922億円
2016年予測 1,700億円
( 07年比 ) (207.1%)
アルツハイマー型認知症治療剤(狭義の認知症治療剤)に加え、脳梗塞慢性期に伴う精神症状(血管性痴呆)に処方される脳代謝改善剤、抗精神病剤を含め抗認知症剤としている。高齢者の健康維持・疾患予防に対する意識の高まりから、単純に高齢者人口の増大が認知症患者の増大を招く直線的比例関係には変化が生じているが、基本的には高齢化の進展が受診患者数の増加をもたらしている。
ここ数年抗認知症剤市場は前年比7~9%程度の伸びを示していたが、国内唯一のアルツハイマー型認知症治療剤「アリセプト(エーザイ)」が適応拡大承認を得たことで、07年は02年以来の2ケタ成長となった。「アリセプト」の処方は軽度から中等度のアルツハイマー型認知症に限定されていたが、07年に高度の障害まで適応拡大したことで前年比20%台の伸びを記録している。エーザイは引き続きファイザーと共同で3,000名を超えるMRによる販促体制を敷いていることから「アリセプト」の拡大が期待され、08年には抗認知症剤市場の75%以上を占めると見込まれる。一方、脳代謝改善剤は、脳血管障害の後遺症に対する対症療法的な位置づけにあり、脳血管障害の治療自体の進歩と後遺症の発症減少から処方は伸び悩み、縮小している。また、唯一脳梗塞後遺症の治療剤として明確な適応を持つ抗精神病剤も、脳梗塞治療の進歩FF58やより多くの精神神経系疾患で処方実績を持つSSRIやマイナートランキライザー(抗不安薬)との競合で縮小している。
3.消化器官用剤
2007年 5,779億円
2008年見込 5,802億円
2016年予測 5,693億円
( 07年比 ) ( 98.5%)
07年の消化器官用剤市場は、前年比1.0%増の5,779億円となった。市場の70%近くを占める上部消化(※1)管疾患治療剤が引き続き実績を伸ばし、市場を牽引している。プロトンポンプ製剤のトップブランドの「タケプロン(武田薬品工業)」の注射剤が06年12月に投入されたことで経口投与が不可能な患者に対して処方の幅が広がったことや、07年8月にヘリコバクター・ピロリの二次除菌法が承認されたことなどが、実績続伸の要因となっている。その他消化器官用剤では患者数の増加に伴い拡大しており、特に炎症性腸疾患治療剤の「レミケード(田辺三菱製薬)」がクローン病(※2)患者に継続的に投与できる適応を追加で得たことで伸びている。また、「ペンタサ(杏林製薬)」も小児への適応拡大や新剤型の投入で伸びている。一方、05年にPEG-IFN製剤で新規処方者を開拓し急激に伸びた肝疾患治療剤は、肝炎ウイルスの治療患者が減少したため、07年以降は大幅な市場縮小となっている。
今後も上部消化器官疾患治療剤がプロトンポンプ製剤を中心に堅調に推移するが、肝疾患治療剤の減少も続くため、消化器官用剤市場は横ばい又は微減が予測される。低調な市場が予測される中、適応拡大や併用療法等、処方や用途の拡大によるプラス要素もある。特にその他の消化器官用剤では、潰瘍性大腸炎やクローン病への適応拡大を目指した製品が数多くあり、中でもアボット社が創薬した抗体医薬品「ヒュミラ」は、自己注射が可能な生物学的製剤としては始めてのクローン病剤として期待されている。
※1:食道から十二指腸まで。※2:炎症性腸疾患の一つ。
以上
<調査対象>
・精神神経疾患治療剤 : 抗不安薬・睡眠導入剤、抗うつ剤、統合失調症治療剤、他の向精神薬(抗躁剤、精神刺激剤)、抗パーキンソン病剤、抗てんかん剤、片頭痛治療剤
・脳疾患治療剤 : 抗認知症剤、脳血管障害治療剤
・消化器官用剤 : 上部消化管疾患治療剤、肝疾患治療剤、膵疾患治療剤、その他消化器官用剤
<調査方法>
富士経済専門調査員による調査対象企業及び関連企業・団体等へのヒアリング調査及び関連文献、社内データベースを併用
<調査期間>
2008年1月~3月
資料タイトル:「2008 医療用医薬品データブック No.2」
体裁 :A4判 256頁
価格 :160,000円(税込み168,000円)
調査・編集 :富士経済 東京マーケティング本部 第二事業部 メディカルグループ
TEL:03-3664-5821 FAX:03-3661-9514
発行所 :株式会社 富士経済
〒103-0001東京都中央区日本橋小伝馬町2-5 F・Kビル
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