いびきは病気のシグナル? いびきと睡眠障害の関係とは
最近寝つきが悪い、睡眠時間はたくさんとっているのに眠い、眠っていても日中眠気が襲ってくる、妻に「いびきがうるさい!」と迷惑がられる……このような経験はないだろうか? これらは睡眠障害と言われるものと少なからず関係しているという。今回は、いびきから起こしうる病気や睡眠障害への対策について、千葉大学医学部付属病院耳鼻咽喉科科長の岡本 美孝先生に話を伺った。
http://journal.mycom.co.jp/articles/2008/12/11/sleep/ 千葉大学医学部付属病院耳鼻咽喉科科長の岡本 美孝先生
- 一般的に、睡眠障害とはどんなものがありますか?
岡本先生「睡眠障害には色んなタイプがあります。まず布団に入って20~30分もなかなか眠れないというタイプ、目が覚めると眠れなくなる中途覚醒タイプ、眠りが浅く、睡眠時間は足りているのに十分寝た感じがしないタイプなどがあり、最近そういった症状を訴える患者さんが多くなっています。また、いびきがひどくなり、呼吸の通り道(気道)が狭くなりすぎて、いびきの後、呼吸が止まるようなら今注目されている『睡眠時無呼吸症候群』になって、心臓や身体のあちこちに負担がかかってしまいます」
- 睡眠障害をもった人が「いびき」を起こしやすいのでしょうか?
岡本先生「睡眠障害をもった人が必ずしも『いびき』を訴えるというわけではありません。いびきは、狭い気道を空気が通る通過する際に鼓膜が振動して生じる異常な音です。いびきだけだと『騒音障害』で済み、本人ではなく周りの人に迷惑をかけることになりますよね。いびきがひどくなると睡眠障害を引き起こします。肥満の方は気道がせまくなりますが、肥満でなくてもあごが小さい人は舌が気道を狭くしやすいので、いびきを起こしやすくなります」
左が正常の呼吸の状態。右がいびきが生じてしまう場合。気道がせまくなっているのがわかる (画像提供:グラクソ・スミスクライン) 「寝ると誰でも筋肉が弛緩し、舌も落ち込みやすくなります。口の奥の軟口蓋も筋肉でできているので、弛緩すると気道が狭くなります。いびきとは、そうした状態になった上気道を空気が通過した結果、周囲の鼓膜を振動させて、音を起こして発生するものです。この状態がひどくなると、通常の呼吸では振動が強く、呼吸できなくなる『無呼吸』の状態を招きます。そうなると、血中の酸素の濃度もどんどん下がると同時に動血脈には炭酸ガスがたまります。この状態が続くと「死」に至らしめてしまうので、脳は『大きな呼吸をするように』という刺激を送ります。すると、止まっていた呼吸は再び大きな呼吸をはじめる……これが無呼吸のあとの大いびきの構造です。ですが、大きな呼吸で再開、となると炭酸ガスが減って脳の刺激もなくなり、普通の呼吸となると、再び呼吸ができなくなってしまうんですね。そこで、脳が再度刺激を促し、再呼吸……、というサイクルを繰り返す―。このことによって脳が寝ていない状態となり、翌日の昼間に眠気が強く、更に心臓にも大きな負担となって病気へとつながっていきます」
- 睡眠障害は"加齢"も関係するのでしょうか?
岡本先生「確かに睡眠障害は年配の方が訴えることが多いのですが、精神的な原因もたくさんあります。ただ高齢になると筋の緊張が低下していびきを生じやすくなると言えます。さらに、アルコールも原因となって気道が狭くなり、いびきや睡眠障害を引き起こしやすくするということがありますね。肥満も大きな原因ですが、鼻炎などアレルギー疾患をお持ちの人も睡眠障害になりやすいことが明らかになっています」
- いびきは自分でわからなかったり、周りの人も"疲れているいびき"と"危険ないびき"の見分けがつかないと思うのですが、危険な症状だと気づく"サイン"はありますか?
岡本先生「確かになかなか『いびき』は自分ではわからないですよね。でも、寝ているわりに日中眠くて仕方がない、疲れがとれない、などの症状は1つのサインですね。また周りの人に寝ている間に呼吸がとまっていないか確認してもらったほうがいいです。独り暮らしの男性の方は社員旅行などで同僚に教わって初めて気づく方もいらっしゃいます」
- いびきから考えられる病気はありますか?
岡本先生「鼻がつまる原因として、鼻の感染、腫瘍、アレルギー疾患があります。扁桃の肥大、咽喉部の腫瘍など上部の気道の病気でも生じます。上気道の閉塞によって起こる疾病です。またいびきがひどくなると、『睡眠時無呼吸症候群』の可能性もあります」
- 睡眠時無呼吸症候群について、検査の方法、予防策などはありますか?
岡本先生「睡眠時無呼吸症候群は、1晩(7時間の睡眠)に30回以上、10秒間以上の呼吸停止が起こることが主な定義とされています。30回以下の呼吸停止は睡眠時無呼吸症候群の予備軍と考えられます。脳梗塞後などの脳の病気による場合はまた別に考えます」
「睡眠時無呼吸症候群の検査の方法は一晩睡眠中の検査で、呼吸の状態や呼吸の通り道の圧を測定したり、脳波で脳が十分に寝ているかを測定します。今は自宅で無呼吸症候群を検査するものもあるのですが、あくまで簡易検査です。一晩病院に泊まって行う検査はなかなか大掛かりなものですが、確実に原因がつきとめられますね」
- いびきを防ぐ方法はありますか?
岡本先生「いびきだけなら、横を向いて気道を広げて寝る習慣をつける、鼻づまりを改善するという対策が挙げられます。ですが、予防策は原因を突き止めることが一番だと思います。どんな程度の狭窄なのか、どこで狭窄しているのか、口なのか鼻なのか、それにより解決策が異なるからです。睡眠時無呼吸症候群を心配する方で肥満気味の方はアルコールを控える、ダイエットをするなどは対策となりますよね。また病院で行う予防法、治療としては、舌が落ち込まないように器具(マウスピース)をつける、肥大した扁桃は一切切除する、あごが小さい人はひどい場合は手術をする、などがあります。ただ睡眠時無呼吸症候群は"病気"なので、しっかりとした治療が必要です」
鼻腔を広げて鼻の通りをスムーズにするブリーズライト(画像提供:グラクソ・スミスクライン) 「いびきを改善する市販グッズはどこまで汎用性があるかわかりませんが、鼻に原因がある場合は『ブリーズライト』などの製品を活用するのも一つの手だと思います」
- 快適な睡眠のために簡単にできることがあったら教えてください。
岡本先生「ストレスをためない、寝る前に深酒をしない、適度な運動をするなども大切です。ですが、もし睡眠障害で悩んでいたら、その原因は様々です。一度、病院で診察を受けて原因を明確にして治療することが一番だと言えるでしょう」
- ありがとうございました。
プロフィール 岡本 美孝先生 医学博士 千葉大学医学部付属病 耳鼻咽喉科科長 1984年秋田大学大学院修了。1990年米国ニューヨーク州立大学バッファロー校留学。その後秋田大学医学部耳鼻咽喉科講師、山梨医科大学耳鼻咽喉科教授を経て、2002年より、千葉大学大学院医学研究院耳鼻咽喉科・頭頸部腫瘍学教授に就任。日本鼻科学会理事、日本アレルギー学会監事などを務める。
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